ごあいさつ

母方の祖父は新潟県南魚沼市で本塩沢織物の製造業をしていました。小さい頃に、新潟へ行くと糸車や機織りの道具が転がっていた記憶があります。祖母が亡くなった時、一番印象に残っているのは祖母の死装束が本塩沢の着物だった事です。着物の知識が全くない私でも、その着物の素晴らしさが一目で理解できました。普段はとても地味な祖母だっただけに、その着物とのギャップに驚いた記憶があります。その時から日本人にとって着物とは特別な存在、アイデンティティの象徴なのだと思いました。その後も私にとって着物は、遠い存在であり七五三や成人式、結婚式等で着る特別な衣装という認識でした。

ある時、帯をリメイクした手提げ袋の美しさに惹かれ、購入しました。その手提げ袋を使っているうちに、祖母や母の着物がタンスに保管されたままで放置されている事に気づきました。

「着物を着る機会がない」
「着付けが面倒」
「着用の決まり事が多い」
「値段が高い」
「手入れが大変」

等の理由で日常において着物に触れる機会が少ない現状、又、周りを見渡してみると、各家庭において、思い出の着物や譲られた着物の処分に困っている現状も知りました。

「着物や帯がもったいないという思い。」

何よりも家族の思い出ある着物や帯を新しいモノに蘇らせたいという気持ちが沸き起こりミシンを購入し休日に自己流リメイク製作を始めました。はじめは楽しかったのですが、小物や袋物を作っているうちに、どうしてもリメイク感から抜け出せず納得いく仕上がりには程遠い出来でした。

自分が素敵だと思うような日常に使える着物や帯を使ったバッグや小物を作ってくれる人はいないのか販売している所はないのか探してみましたが見つける事が出来ませんでした。

欲しいモノが無いなら自分で作ろう。
着物や帯を活かし、丈夫で長く使えるモノを作りたい。
着物や帯を革と合わせたら丈夫で素敵なモノが出来るかしら。
革と合わせて美しい状態で長く使えるバッグを作りたい。
革の勉強をしてみたい。レザークラフトを学びたい。

という思いが日ごとに強くなりました。

 

今まで、これといった特技や趣味もなく、一般の会社員だった私。平凡だからこそ、やりたい事が見つかったらその時は絶対に挑戦しようと思っていました。年齢的にも40台後半で、とても不安はありましたが始めるなら今しかないと覚悟を決めました。家族にも自分の思いを相談し会社を辞め、バッグ職人さんの元へ通う事にしました。革の勉強を始めてから、モノづくりの楽しさを教わりました。

着物・帯に合う革の色や質感を探す楽しさ
着物・帯が新たなモノに生まれ変わる楽しさ
一枚の布や革から立体的なバッグが出来上がる楽しさ
世界に一つのバッグや小物を持つ嬉しさ

この楽しさ・嬉しさを他の人にも共有したい気持ちに変化し私のように着物から遠ざかっている人にこそ、着物・帯革バッグを使ってほしい。日本の伝統技術の詰まった着物・帯の美しさを身近に感じてほしい。又、家族の思い出の着物・帯から日常使い出来るモノへとアップサイクルしそれを身につける事で、家族を身近に感じてほしい。との思いから「KODAMA-蚕玉」を立ち上げました。

しかし革と合わせて作っても使用していれば、着物や帯は痛みやすく汚れに弱い。刺繍等の糸ほつれもあります。この弱点を克服すれば、もっとたくさんの人や場所で着物・帯を利用できリサイクルの可能性が広がる。又、着物や帯が廃棄処分させる機会も減り環境負荷を軽減出来るのではとの思いに至りました。

それには着物・帯を防水加工する事が一番良い方法だと感じました。PVC加工という方法がありましたが、納得のいく質感ではなく、他の方法での防水加工はないか情報を探していたところ革仲間から、ある素材があることを教えて頂きました。その素材を使う事により、着物や帯を刺繍ほつれの心配もなく、雨や汚れに強く、アルコールでのふき取り消毒出来る、防水加工を実現する事が出来ました。

社名の「蚕玉」とは蚕の神、養蚕をつかさどる神という意味です。

蚕が作った繭からシルクが生まれます。蚕が無事に育つようにお祈りし、大切に育みその結果として日本文化や産業が発展してきました。原点である蚕からはじまり、それに携わった人々の思いがきもの・帯には詰まっている。原点や思いを忘れず、うやまい、循環し、繋いでく。

そんな思いを「KODAMA-蚕玉」に込め活動しています。

KODAMA-蚕玉
代表 貝瀬 真知子

KODAMA-蚕玉

所在地
埼玉県富士見市水谷東2丁目

電話
090-5446-2206
※営業のお電話はご遠慮ください。

営業時間
9:00~18:00

定休日
日曜日・祭日